前々回の「血ガス分析の基本①」に引き続き、今回はさらに踏み込んだ「基本の②」をお届けします。
前回お話しした4項目(pH, PaCO2, HCO3-, PaO2)に加え、これから紹介する4項目が読めるようになれば、臨床業務でのアセスメントに支障はないでしょう。それでは、現場でよく見る数値の「意味」と「対応」を解説していきます!
⑤ Lac(乳酸値 / ラクテート)
- 基準値: 0.5〜2.0 mmol/L (5〜12 mg/dl)
- 見方: 主に「循環不全」の指標となります。
「嫌気性代謝の代謝産物」と言われると難しく感じますが、簡単に言うと「体が酸欠(ショック、貧血、敗血症など)の時に、無理やりエネルギーを作ろうとして出てくるゴミ」のようなイメージです。 アシドーシスの時は大抵上昇しています。急にLacが上がった時は、体の中で何らかの異常(組織への酸素供給不足)が起きているサイン。必ず患者さんの全身状態と合わせて確認しましょう。
⑥ K(カリウム)
- 基準値: 3.5〜4.5 mEq/L
- 見方: 高すぎても低すぎても、命に関わる不整脈を引き起こします。
- 低K血症: 口渇、倦怠感、不整脈など。ICUで利尿剤(フロセミド等)を使用している患者さんは低くなりやすいため注意が必要です。
- 高K血症: 呼吸困難、不整脈、心停止など。GI療法(グルコース・インスリン療法)や、透析(CHDF, HD)での対応を検討します。
ちなみに、心筋梗塞でPCI(経皮的冠動脈形成術)を行った患者さんは、Kを4.0以上と高めに維持させる医師が多いです。これは、術後の致死性不整脈を予防するため。現場特有の「こだわり数値」ですね。
⑦ BS(血糖値)
- 基準値: 70〜100 mg/dl(ICUでの目標は150〜199 mg/dl程度)
ICUでは、低血糖はもちろん、術後の高血糖も厳格に管理します。
- 低血糖への対応: 冷や汗、頻脈、意識障害など。50%ブドウ糖液を静注し、15分後に再検して目標値まで繰り返します。
- 高血糖への対応: 術後は感染リスク等を下げるため、インスリンのスライディングスケール等で厳しめに管理します。
【重要ポイント:糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)】 ERから血糖値900mg/dl超えで入室してくる患者さんもいますが、急激に下げるのは禁忌です。目標は「1時間に50〜75mg/dl」。急激に下げると、浸透圧の変化で脳細胞に水分が流れ込み、脳浮腫を引き起こす危険があるからです。低K予防も含め、インスリン持続投与で慎重にコントロールします。
⑧ Hb(ヘモグロビン)
- 基準値: 男性 13.5〜17.6 g/dl / 女性 11.3〜15.2 g/dl
- 見方: 全身に酸素を運ぶトラックの役割。現場では「ハーベー」と呼びます。
低いと貧血になり、頭痛、めまい、呼吸困難などが出現します。是正方法は主に輸血(RBC)です。 教科書的な基準値はありますが、臨床で介入(輸血)を検討するのは8.0g/dlを切ったあたりからが多い印象です。このあたりは医師の判断(匙加減)も大きいので、指示を確認しましょう。
以上が「血ガス分析の基本②」でした。 他にもNa(ナトリウム)やCa(カルシウム)、さらに詳しく原因を探るBE(ベースエクセス)やAG(アニオンギャップ)などもありますが、まずはこの全8項目を押さえておけば十分です!
もちろん、これだけで判断せず、先輩や同僚と一緒にアセスメントを深めていってくださいね。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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